メニュー

footer logo

header en offheader ch off

header en offheader ch off

IMA コラム

美味しい建築

カテゴリ: 建築デザイン 作成日:2009年01月14日(水)

090122 1
今回はワインと建築のお話です。ここ数年来、欧米のワイン生産地域では、著名建築家がワイナリー建築を手がける例が散見されるようになってきました。コンセプトはいたって明瞭簡潔、ホテルを経営するワイナリーの畑まで直接行って豊かな自然ときれいな空気の中美味しい料理とワインを愉しみ、スパなども体験できてしまうというもの。今回はそのうちのひとつ、私が以前訪れたオーストリアに建つスティーブン・ホール(Steven Holl)設計のロイジウムホテル(Loisium Hotel)を紹介します。

敷地はウィーンの北西70kmほどに位置する小さな村のワイン畑の中。地上3階建、全82室のホテルとそこから100mほど離れたワイン販売所とカフェ、更に地下にはかつての醸造庫を利用した広大な展示空間が広がっています。ホテルは、スティーブン・ホール特有の隙間や亀裂の入った四角形やざっくりとした鉤形等様々な図形が客室を形作り、ロの字形の1階部分上に配置されていて、写真のように1階から上階がせり出しています。その他に、様々な工夫が凝らされた内部空間や客室も、旅人を楽しませてくれることでしょう。
090122 2

ところで、オーストリアワインといってもほとんどの方にはピンと来ないかもしれませんがそれもそのはず、世界総生産量にして1%ほどのワインを更に自国でほとんど消費してしまうということですから無理もありません。ただそのオーストリアに、今回紹介したロイジウムの他にも多くの魅力的なワイナリー建築が見られるのはおそらく、1985年に発覚してこの国のワイン業界を壊滅させてしまったスキャンダル(ジエチレングリコールという糖分の一種をワインに混ぜてコクと甘みを増し、安ワインを高級ワインとして組織的に売ろうとした事件)から20年あまり苦渋の時を経て自信と誇りの復活の象徴といったところなのでしょうか。
090122 3

そんな人々の思いが沢山詰まった面白い建築を、これまた美味しいワインと共に味わってみるのも、大都市観光とは一味違った魅力があって良いかもしれません。

(Biergarten)