天龍寺の前身は遠江国(とうとうみのくに)にあった法泉寺とされ、由緒正しく歴史のある曹洞宗の寺院である。前身である法泉寺は家康江戸入府に際し、現在の新宿区牛込町付近に移され、この移転を機に名を天龍寺に改めた。天和の大火による消失後、現在の場所に移転したという。敷地は新宿駅にほど近く、甲州街道と明治通りに近接して車の騒音の絶え間ない喧騒にあるだけでなく、周囲を高いビル群に囲まれている。計画では、その環境にあっても、境内に入ると自然と空気感が一変し、歴史と静粛が感じられるよう、建物デザインは伝統的な禅宗伽藍様式を採用し、そのディテール各所に緊張感を演出した。本堂と庫裡の間には勾配を持つ中庭を設け、この中庭により半地下の客殿を利用する参詣者が周囲の喧騒を忘れ自然を感じる設えとした。