クライアントは中国文化に造詣が深く、「建築も芸術品でなければならない」という意向を受けて取り組んだ計画である。中国の祭祀建築にみられる六角形の骨格に、軒反りのある勾配屋根を載せた形態を基本方針とした。建物は本社機能の中枢「昇龍樓」、低層部に美術館を有する「双鶴樓」、両棟間に共用部「コア棟」と美術館併設店舗「喫茶妙好」の4棟で構成し、建物の中央で来訪者を迎えるシンメトリーな配置とした。両翼の昇龍樓、双鶴樓は外装に表情豊かなせっ器質タイル、屋根に銅板本瓦棒葺きを採用した重厚なデザインとし、中央のコア棟と喫茶妙好をプロフィリットガラスを用いた軽快なデザインとして対比した。構造は六角形の特徴を活かした正三角形の集合体の格子梁により約26mの大スパン架構を実現した。またクライアントの手による縄文陶板壁や古木のアート、鍛金彫刻家安藤泉氏作の風見など、随所にクライアントの想いを散りばめた建築とした。