佐藤千壽の雅号を冠する石洞美術館は、美術工藝を通して国際文化交流、相互理解の促進、我が国の文化向上を目的に、地域貢献への想いと共に、新築する千住金属工業本社ビル内に計画された美術館である。佐藤千壽(せんじゅ)氏(1918~2008)は美術収集家であり、千住金属工業会長をつとめた。展示は財団法人美術工藝振興佐藤基金が所蔵する地域ゆかりの版画、アジア・ヨーロッパの陶磁器、金属器、宗教美術など多岐に渡る千壽の収集品が展示される。グッゲンハイム美術館の様なスロープを用いた展示を行いたいとの要望を受けて、展示空間は2層吹抜けとし、六角形の平面外周に沿った展示空間を兼ねたスパイラルスロープによって、回遊性のある計画とした。吹抜けを貫く特徴的な2段式タワーケースやスロープを用いた鑑賞動線が生み出す立体的展示は、移動と共に視点を変え、鑑賞にリズムや奥行き感を与え、より味わい深く作品を楽しむことが出来る。