開創400余年の歴史を持つ寺院の、本堂・客殿の建替え計画である。長い歴史を持つ寺院は地域との関わりの歴史も深く、計画では「街に、人に開かれたお寺」をコンセプトに進めることとした。建物は前面道路へ正面を向け、地域の方々が気楽に手を合わせられる「街に対して開く」配置とした。本堂は2階に構え、通りからも本尊像を拝めるように建物の高さや本尊像の位置を設定し「開かれたお寺」具体化した。外装は禅宗寺院の厳格さと静寂さを、「放下着」という禅の教えをヒントに華美な装飾を排し、重厚かつシンプルなデザインで表現した。伝統的な形態や素材を現代の解釈で用いて、寺の歴史の継承と現代のデザインの融合を目指した。外壁は禅宗様の特徴である板張仕上げを再解釈し、杉本実型枠化粧打放しを用いた黒色コンクリートで表現した。内部は欅材と漆喰の2色を対比したシンプルな構成と勾配天井によって、本尊への求心性を醸し出す空間とした。