鉄道会社の厚生福利施設である馬込社宅は、敷地内で地域の祭りや花見などを行い、昭和初期より地域との深い関わりを育んで来たが、建物の老朽化により建て替えが決定された。計画は家族寮2棟、独身寮、保育所、公園等を区道を跨いで同時に整備する大規模な事業であるため、一団地の総合的設計制度を活用することで、地域の環境整備を合わせて計画し、新たな地域コミュニケーションの創出と、周辺住宅への影響を低減することを目指した。同制度の配棟の自由度の高さによって、当時の面影を感じさせる建物配置と周辺への日影の影響や見合いを抑えた計画を実現した。また官民の協調を誘導し、区域中央の切通し状の遊歩道(区道)空間を社宅敷地内へと拡張し、大田区が進める「桜のプロムナード」と一体となった公共空間を創出した。この空間は災害時には帰宅困難者支援ステーションとなり、防災備蓄倉庫、非常用電源を備え、地域の防災拠点として整備した。